中北幸久、匠の眼

匠が語る真珠の話1

真珠養殖

#280 近年、三重県内の真珠養殖が大きなダメージを受けている。自然破壊や世界経済の景気動向など、要因は様々であるが、バブル期の隆盛は見る影もない。今も継続している業者は、高齢を迎えた夫婦単位が過半数を占め、後継者不足がさらに拍車をかけている。

 サイズ的には、白蝶貝や黒蝶貝による南方系の真珠には及ばず、量的には淡水真珠に圧倒されているのが現状である。しかし、2ミリ・3ミリ・4ミリといったベビーパール(厘玉)サイズは、徐々に見直されつつある。時代における流行り廃りはあるものの、もう一度、国産の真珠の良さを見直してもいいのではなかろうか。

 伝統的産業を守っていくのは、消費者の側にも責任があるように思える。

 

一般社団法人・日本本命真珠協会

#283近日公開予定 一般社団法人・日本本命真珠協会とは、国産真珠の品質を明確にして、消費者が安心できる製品を提供していくべきだ、との思いから設立された社団法人である。それも出来ることなら「可能な限り、真珠に過ぎた加工を加えることなく、より自然に近い状態の真珠を使用した製品を提供するべきである」という趣旨によるものである。

 この考え方は、誰しもがその内に持っているものであるが、現状は必ずしもそうだとは言えないのである。とりわけネックレスなどの製品は、まだ染料等によって着色されたものを多く見かける。業界では(調色)の言葉を使用するが、如何に言葉を変えようとも着色なのである。最近は色を整えるためにということから、タヒチの黒真珠にもごく稀にではあるが、着色を施したものがある。

 しかしながら衣服はもとより、ガラス・ビーズ等のアクセサリー、食品などにも人工着色されたものは数多くある。このことを思えば日常的なことかもしれない。しかし、こと真珠に関しては、どこか間違っているような気がする。

 

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