指導記録と考察 1 2 3
(2004年度川越中学校 第2学年)
勤務校にて「つづりと発音学習」を実践した。対象の第2学年では少人数学習が実施されており、1クラスを2つにわけて別の教員が担当している。したがってもう一人の教諭にも事前に協力の了承をいただいて、それぞれのクラスで実施した。なお、少人数クラスは能力別クラス分けではない。方法は以下の通り。
1. 最初に教員が3回発音
2. 教員に続いて生徒が3回繰り返して発音
3. 生徒は思いつく限り、その発音になるつづりを書く
この活動は正解を書けることも目的であるが、発音からつづりを導き出すことを重視しているので、同じ発音の別のつづりを書くことにも重点を置いている。最初の10回のデータは以下の通りである。上記の通り、生徒は複数回答している。
No. |
単語 |
正答率 |
第2位(%) |
第3位(%) |
1 |
mate |
42% |
meit(38%) |
mait(24%) |
2 |
fade |
64% |
feid(42%) |
faid(20%) faide(20%) |
3 |
tide |
73% |
taide(29%) |
taid(20%) |
4 |
dike |
80% |
daike(31%) |
daik(29%) |
5 |
dote |
76% |
dout(38%) |
dowt(13%) |
6 |
duke |
78% |
dyuke(24%) |
douk(11%) |
7 |
bride |
76% |
bryde(29%) |
braid(13%) |
8 |
spice |
60% |
spise(69%) |
spyse(20%) spyce(20%) |
9 |
prime |
82% |
pryme(27%) |
praime(13%) |
10 |
spade |
89% |
speid(18%) |
spaid(13%) spayd(13%) |
※ 第2位 第3位は正答以外のつづりで多く書かれた回答
2.間違ったつづりパターンにはローマ字の影響が強く見られる。
eiのパターンは eight のような単語にも見られるので必ずしもローマ字的発想と言い切ることはできない点もある。ただし授業で
ei を「エィ」のつづりとして書いた生徒にその根拠を尋ねてみたら、ほとんどがローマ字であり、具体的に eight のような単語を示すことが出来た生徒はごく小数であった。
顕著な例としてはNo.6 duke である。英単語において、日本語の「ュ」にあたる音を y で作り出すことはほとんどない。「ユー」にあたるつづりは ew
や eu のようなつづりパターンが一般的である。こういった感覚は日ごろの授業の中で鍛えていくことが大切である。
3.あいまいな点を多く含みながらも既習語のつづりパターン参照できている。
No.1 mate の第3位解答が mait であったことも大きな意味を持っている。これは生徒が既習語である
rain train などから連想して書いたものである。このようによく似た音を意識してつづりを導き出す感覚というのは英語学習において学習者の負担を軽減し、理解を促進するものであると考えている。理解を無視した丸暗記だけの学習ではこういった発想を鍛えていくことはできない。このようなつづりパターンを意識することができていることを具体的に生徒が自分で実感することが、生徒の学習意欲向上にもつながっていくであろう。
4.つづりパターンの学習は大部分の生徒が受け入れることができるものである。
Eルールを覚えてしまえば文字数が4から5に変化しても正答率は大きく影響を受けることはなかった。No.8
spice で正答率が低いのは、語尾の「ス」を作り出すつづりが c を使うことに気付くことができなかったためであり、「アィ」の音そのものはしっかりと作ることはできているのである。この場合も
nice を思い出させることで生徒を納得させることができる。正答率の上昇が示しているように、中学2年生であればつづりと発音学習は効果があると言えよう。
日本語における漢字の仕組みはよく考えてみるとおもしろいものである。同じ漢字がいくつもの異なる読み方を持っているのである。英語であっても同じことが起こっているというだけと考えると、日本語に慣れているという点はアドバンテージにもなりうるものである。英語の発音パターンには例外が必ず存在するが、漢字ほどのバリエーションではない。「神戸」という地名は「こうべ」「かんべ」「ごうど」などの読み方あるくらいである。