指導記録と考察  2 
発音記号を使わない発音表記方法

 実際に中学校で指導して何年にもなるが、スペリングクイズに対する生徒の反応は大変いい。音からつづりを見つける活動そのものが言語の基本的な活動でもあることを体感することになる。実際に指導をしてみるといろんなパターンを指導したくなってくるが、やはりこの E-rule World のサイト内で紹介している程度にとどめておくことが適切なようである。何度か述べてきたように、法則化はどこまででも可能であるが、常に存在する例外パターンのこともあり、このサイトで紹介している「Eルール+その他のつづり 」 を重視した指導を続けていきたい。

 また、発音指導においては常に「発音記号」が問題となる。私は中学校での発音記号を使った指導は非現実的であると考えている。実際に中学校で指導をした経験のある教員であれば、生徒の能力差と授業時数を考慮して当然と感じるはずである。そこで完璧ではないものの、次のような表現をすることでかなりの発音をカバーできると思っている。さらに考えてみると、発音記号そのものも果たしてどれだけの人が正確に読めるのか、大きな疑問である。発音記号をカタカナ読みするよりも、発音を意識する機会を増やすことが大切と考えて、以下の表記方法を推奨する。ただしこれらはあくまでも中学生を対象にした指導を前提に考えたものであり、すべての発音パターンをカバーできていないことを承知の上で参考にしてほしい。

1
母音及び母音をともなった音 カタカナ
2
母音をともなわない子音部分の音 ひらがなの小文字
3
第1アクセント(強勢)部分 太字の大文字
4
二重母音の2つ目の音 カタカナの小文字

 例を示すと次のようになる。

play
レィ
famous
フェィマ
interesting
ンタラティン  ティン
tantamount
ンタマゥン
ameliorate
リァレィ
anonymity
アノマティー
hilarious
(L)リ(R)ァ  LRを区別して表記したい場合の例


 学習の補助的存在としては十分であると考えている。もちろん所詮はカタカナなので、RL・TH・MNなどは区別できないが、それらは単語を見ればわかることである。どうしても表示したい場合は上のhilariousの例のような方法もある。
また、日本語は基本的に常に母音をともなうので、英語に見られるような子音の表記はできない。その点をひらがなで表記することにした。もちろんそのまま読めばカタカナでもひらがなでも同じであるが、ひらがなを見たらそのまま読んではいけない、という程度のレベルの意識付けになる。
 ただし、英語の母音部分の表現もカタカナで表現すると1種類になってしまう。この点だけは大変大きな問題である。しかしこれを犠牲にしてであっても発音記号の負担よりはいいと判断した。

 このような発音表記は、単語のつづりパターンに対する興味を引き出していくことを手助けしてくれるであろう。実際には発音記号をカタカナ読みしている人口が相当数に達することを考えてみると、受験のために難解な表記方法を覚えることの無意味さが感じられるのである。さらに、発音記号を読むことができても書くことができないことも多い。教員であっても中学1年生の教科書の英文をすべて発音記号で書き直すことができるのはごく一部に限られるであろう。教員が指導上の負担を軽減するために生徒に新たな負荷を与えるのではなく、学習を単純にわかりやすくすることは重要である。