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企業誘致(工場誘致)について

 浜島町の人口が年々減少し町勢にかげりを見せていることは、全国的な趨勢とは言え今まで町の執行部として歩んできた一人として忸怩たる思いである。

全国の地方都市がこの問題に取り組んできて入るが、抜本的な解決策を見出せずにいる。すなわち少子化対策、企業誘致などがそれであるが、うまくいくとは限らず、社会問題化しているのが実情である。

我が町は、過去に合歓の郷を誘致し近隣市町村に羨ましがられたが、町民意識としては芳しいものでなかった。近年磯部町にスペイン村が出来たが、それも当初の期待を大きく裏切っていると言われているが、果たしてどうなのだろうか。地域があまりにも企業に期待を大きく持ちすぎただけではないだろうか。

棚ぼたのような話はありようがなく、企業と共生しながら自らも努力するより解決の道はない。

あまりにも企業への依存心が強いこと、高望みに過ぎることが町の発展を逆に阻害している。

 

期待される企業誘致

そこで客観的な立場に立ち返り、冷静に企業立地を考察してみたい。

  まず其の前提としての人口対策を大まかに衣、食、住にたとえて挙げると、

衣とは生活環境であり……教育・文化等・日常生活の利便性などの環境整備

食とは経済環境であり……労働・雇用など働ける環境整備、

住とは住環境であり………宅地・公園などの整備ととりあえず仮定する。これらの環境整備が町作りの基礎であることは論を待たない。中でも、現今の不況のもとでは日々の暮らしを支える経済活動の活性化が、最も町民の関心を呼ぶところとなるのは当然のことであろう。

  そして、誰しもが人口増加の1手法としての企業誘致や、宅地造成に期待をかけることとなる。

  しかし、その受け手となる企業側の論理はどうであろうか。企業経営の目的は、利益追求にありその結果として地域貢献がなされるものであり、地域を救うことを目的とした企業立地などありえない。

彼らにとって企業立地の条件が示されるのはおおむね次のようなことになる。

                            用地(安価)

                            輸送コスト(道路、空路、航路)

                            労働力(安価)

 これら条件を満たすには、浜島町は都市からも遠く、どんなに道路が整備されても輸送コストが高くつく。

リアス式海岸と言う地形から平地が少なく地価も高い。これらをカバーし、企業の採算性を確立させ得る条件整備が果たして可能かどうかに問題が集約されてくる。

 また、労働力としての人の問題については(人口減分析)

      ○稼ぎの場が無い・・・高収入、高学歴、格好良い

      ○不便である・・・・・住まい、子供の教育、買い物等

            ○都会への憧れや夢・・若者意識の変化(勤労重視から生活重視へ)

      ○出生率の低下・・・・社会現象、女子の高学歴化

  以上を背景として町内の常住人口が減少するという悪循環が起きている。

 その他忘れてならないのが、町民が望む環境にやさしい非用水型の工場の多くは、塩害等海岸部を嫌う工業製品に関する業種が多いと言うことである。反対に、企業側は塩害や輸送コストなどに大きなリスクを負うために立地を嫌う。

よく考えてみれば、臨海工業地帯で発展してきた産業を思い起こすと、大方が重化学工業等を初めとする公害企業であった。一部、水産加工等で成功している例もあるが、これすらも用水をたくさん必要とし、海の環境のためにはこれらの企業立地には賛同しかねる。

いかに企業誘致といえども手段は選ばなければならず、極論すれば原発誘致でもと考えたのが海山町の例である。

 要するに、企業にとってもメリットがあり、我々にとっては最少のリスクで利害が一致するものが見出せないことにこの問題の根がある。

 

企業誘致は可能か

当町の特性を客観的に眺め、問題を整理しないと何時までも他力本願の企業誘致に頼ることとなる。企業は利益追求が其の使命であり、地域貢献はその付随であるため、これに期待を掛けたり出来もしないことに希望をつないだりしていては、いつ迄たっても空虚な議論に終始してしまう。

県内には、浜島以上の立地条件に恵まれた土地が、幾らでもあると言うことを考えれば自ずと結論は出ている。近郊でも、高速道路に近い地域そして安価な地価の地域が、しのぎを競って企業誘致を図っており、

それと同じ土俵で勝負することはまず出来ない。

 私の言いたいのは、浜島は工業立地に不適当な土地であると言うことを認識せざるを得ないということである。この辺で工業立地に淡い期待を掛けるより、町民も客観的な立場に立って早く幻影から目覚め、違う道を模索しなければ、百年河清を待つことになる。

  浜島は、浜島の持つ地域資源が生き、多少地価が高くても良い企業立地の方向を目指さなければならない。それには、自然を最大限保全しながら、観光地づくり、もしくは立地を生かせたソフト産業づくりこそが残された道であると思う。浜島の自然はどこにも代替性は無く、私たちが考えている以上の大きな財産に違い無いと思う。

 即ち、ハード企業の立町とソフト企業の立町を比較検討する余地はないと思う。そういう意味で、賛否はあったがゴルフ場の立地を図ったのも、企業誘致の一環と位置付けられる。

 卑近な言い方をすれば、三枚目は三枚目に徹してこそ、存在価値が出来てくるが、二枚目を目指しているといつ迄も浮かばれることはない。

 

企業誘致と町づくり

具体的な町づくりは、まず憩いの場として国民の癒しを担う町づくり観光を誰しも思うことである。しかし、同じ観光振興策を実施するにしても、観光を振興すれば町が活性化できるというのではなく、私は町を活性化するために観光を振興しなければと思っている。観光町づくりと町づくり観光には、まるで目的と手段に大きな相違がある。主体を町づくりにおいてこそ町民とのコンセンサスが得られる。観光を振興しなければ浜島の発展は無いと考えるのは大きな間違いである。

其の関連にリゾートオフィスの開発や誘致などがある。

次に自分たちの生活に密着した殖産興業がこれからの課題になるであろう。

環境事業や福祉事業にその切り口を見出せる。今問題となっている、広域連合の課題解決に其のヒントがある。

さて、雇用の場としてのハード企業立地への期待は捨て切れないが、どの面からしても幻影でしかないことを理解しよう。ギブ アンド テイクが社会生活の原則である。企業から得られることばかりを期待して、企業誘致を夢見るのはナンセンスである。何を与えるか、何かを犠牲にすることが当然必要になってくる。どの方向を目指しても、自分達に都合の良いことだけでは事が運ばないし、どうしても付けは回ってくるのだから、受忍の限度を見付け容認すべきは受けて立つ構えが必要となる。

公職の立場では、リスクを受忍しようとは言えなかったが、自由の身となった今、声を大にして皆にも考えて欲しいと訴えたい。皮膚を切らせて骨を切る覚悟が今求められている。

これからの時代、もっともっと自然保護、環境保護が政策の重要課題となってくるであろうし、その時にこそ浜島町が脚光を浴びる時代となればよい。

 新しい時代に対応しながら、未来に手渡ししていく環境を守り、子孫の生活を良くしていくかが今を生きる者の責任であり、長期展望に立って政策決定をしながら調和の取れた町作りが実施されて欲しい。

 

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