陸磯計画を切る
事業はやって見なけりゃ分からない。良く分かります。
TVや舞台で活躍するスターはごく少数派です。彼らは皆、自分ならこそと思い成功を信じて挑戦をした結果だと思います。やってみた結果に相違有りません。しかし、彼ら以上に実力を身につけた人が、脚光を浴びることなく終わってしまうケースがその何倍もいることも忘れてはなりません。
このような事は私的には許されることです。
しかしこの陸上磯は、公共が直接手がけ、しかも、やる前から採算の採れないことを当局は表明し、また、将来的に回復する見通しは示されておりません。可能性のあることに賭けると言うのならまだしも、なにがなんでもやってみれば良いと考えるのは、公共では通用しない無責任極まりない話しです。まるで宗男ハウスを彷彿とさせるような話しではありませんか。
赤字垂れ流しの施設が、町にどのような波及効果をもたらすか考えても見てください。それを期待した商店はすべて運命を共にし、ますます町全体が疲弊していった例が数多くあります。
２００万人近くの客を呼ぶスペイン村で、磯部町はどれだけ町が活性化したでしょうか。全国規模のスペイン村ですら知っての通りです。まして税金も入ってこない公事業、入り込み客予想と言えばその百分の二、波及効果は幻影に過ぎません。
私は流動人口の増加策には何ら異論ありません。問題なのは、この陸磯計画で集客が出来ないと断じているからです。もっと町民を利する事をもって観光客の誘致にもつなげられないかという事です。
たとえば、本来の磯の漁場造成や種付け、環境整備をする事によって磯公園を作る。誰でもが気軽に利用できる温泉施設を開設する。徹底的に大矢の浜を中心に海岸環境整備を図れば、それこそいろいろな体験が出来るのではないでしょうか。
町村の放漫経営を規制し、健全財政を保つために定められた地方財政法は、観光施設事業についての経営原則を独立採算制と規定しております。施設の経費は、特別会計を設けてその収入で賄うと言うのが独立採算性です。これからすると建設計画段階で、経営赤字の計画を提出することそのものが、違法であることに気づいていないのが驚きです。仮に今の段階では違法ではないとしても、完成後には特別会計を設けて独立採算の元で経営する必要があります。これから逃れるために名目を変えたとしても、この種事業は観光施設事業とみなされ法適用を免れません。もし、そのような姑息な手段が取られたとしたら、この事業の先行きのないことを自ら立証するものとみなして間違いありません。
それに元々は、町の事業で爆発的な成功を収め、利益を町に還元しようと言うことから始まった事業です。その事業が、将来とも回復の見通しの無い赤字が避けられないなら撤退するべきです。
また、先の事は合併市が考えれば良い、放漫財政の尻拭いも合併市に委ねるような考え方であっては、町民を愚弄するものと言わざるを得ません。行く行くは、浜島町への投資に順位がつけられることになり、福祉や教育がしわ寄せを受けることになるのが必定です。この施設維持のために、他の社会資本整備が遅れると言うことが起きてくるのです。それでもやってみる価値があると思いますか。
公共は先を予見し、将来への布石を第一に考えることです。もっと堅実な考え方をし、この種の事業に可能性を信じて事業化しようと言う人を、支援していけば良いと思います。あの土地を事業者に貸せるのもその一つの選択肢です。やってみる価値が有ると考える方々を率いて、首長自らオーナーとなって進めることも出来る筈です。その時に始めて、やってみなけりゃ解らないと言っている賛同者の方々の真価が問われます。今の計画の陸上磯に何人参画者が現れるでしょうか。今の世は、自己責任の時代です。
私は今まで、少ないながら成功事例も有りますが、数多くの失敗事例を見聞きしてきました。失敗したのち、引退した首長の後を受けた新首長や、議会が赤字垂れ流しのこれら施設の処理に奔走し、町の未来を考える余裕すらないと言う町がたくさん有ります。
個々の議員も多くは反対していると聞こえてくるが、声を大にする人は少なかったようです。本当に町を憂い、将来に責任を持っているのか疑問に思えてきました。私としても、元の職場、元の同僚に嫌われるような事は避けたいが、無関心を装った卑怯者でありたくない。また、黙って実施を傍観し、破綻してから溜飲を下げるという事は自分の主義でありません。少なくとも、ここで黙していては、もと町職員としての責任を放棄し、町民に対する背信行為と思うからです。
真剣に取り組んでいる職員も被害者であると思っている。
職員は自信を持ってこの計画を推進しているのでしょうか。私のかって知る職員達なら、この事業の成功を確信している者がいるとは到底思えません。最も困っているのは、これらのことを分かりながら、進めざるを得ない町の職員であると思っています。
